高齢者・障害者には、脱ぎ着しやすく着心地の良い被服の提供が必要なので、重心動揺を指標として快適被服設計の原則をとらえた。高年17名の実験はフィールドワークで、若年33名には衣服圧測定や官能検査も含め着用実験を行った。椅座位動作時の重心動揺、所要時間に着目し解析した。1.服種別に検討した所、高年女子ではワンピースより2部式被服の方が楽で、ソックスは生体負担が大きく、前あき上衣が一番扱いやすい。高年男子では障害者が好んで着用する服種は、生体負担が少なかった。着衣時には患側を先に操作しかばっていた。かぶり式シャツは頭髪の汚れを気にすると扱いが大変になる。2.バストライン(BL)上のゆとり量・アームホール(AH)下げ寸法を変化させたブラウスの着脱実験から、ゆとり量の多い方が有意に着脱しやすく、機能低下の顕著な人には(AH)を2cm下げると生体負担が有意に減少した。若年のかぶり式被服の腕入れ腕ぬきに必要なゆとり量は、厚みのある体型で20cm、普通体型で20cm〜24cm、偏平体型で24cmである。(BL)上のゆとり量は、衣服圧及び全体・肩部・上腕部の着用感に、(AH)下げ寸法は肩の着用感に有意に関わっていた。着用者からみた適切ゆとり量は、高年については厚みのある体型で20cm、普通体型で24cm、偏平体型で28cmである。若年では高年よりいずれも4cm少ない。着用者のこの好みの結果は実験結果と矛盾しないが、若年では偏平体型以外は、腕ぬきでないゆとり量である。機能の低下している人にはゆとり量を増やし負担を軽減する必要がある。3.パターンとの関わりをみると、更衣動作の難易には左後腋点〜右肩峰点までの体表長(AB)と上腕長(BC)が深く関わり、(AB)のバイヤス方向のゆとり量が重要な要因として働く。袖山の高さは着脱性の難易や着心地に大きく関わり、機能低下の著しい人には、袖山の高さを低くし袖の被覆面積にゆとりを持たせ、上腕部の運動適応性を高めることが有効である。
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