平成6年10月下旬文部省より科学研究費補助金交付の内定通知を受け、12月より補助金の使用が可能になり研究に着手した。まず、11月中旬より、三世代家族の世代間関係という視点から「祖父母と孫の関係」に取り組んでいる先行研究の検討を行った。この結果、日本では依然として子や孫と同居している高齢者が高率であり、しかも平均寿命の伸長によって祖父母が孫とつきあう期間は20年以上に長期化し、祖父母と孫の関係の重要性が高まっていること、多くの三世代・四世代家族において祖父母と孫は大変親密であること、孫の存在は、祖父母世代と父母世代の日常的接触や役割援助を促し、両世代間の緊張を和らげていること、祖父母による役割援助は、共働き家庭の年齢の低い孫に対して最も多くなされていることなどの知見が得られた。 そこで、これらの先行研究をもとに調査票を作成し、平成7年2〜3月に以下に示す調査を実施した。調査対象者は静岡県蒲原町・由比町・富士川町の9つの保育園に通う6歳以下の子供があり、父母が共働きをしている三世代家族の祖父母とした。有効票は祖父母揃いの有効票が134票と祖母のみの有効票が64票の198票、合計332人である。 現在、調査が終了し、調査票の整理、コーディング作業を進めている。今後、東京大学大型計算機による統計処理を行い次の点などについて分析・検討をする。(1)孫に対する世話や養育の内容、及び孫との情緒関係は、祖母と祖父でどのように異なっているか。(2)孫の世話や養育の程度は、祖父母自身の満足感や不満感、生きがいに、どのような影響を及ぼしているのか。それは、祖父と祖母でどのように異なっているのか。(3)祖父母が孫を世話、養育していることが、父母世代との世代間関係にどのような影響を及ぼしているのか。(4)孫の世話や養育の程度は、祖父母の年齢、健康状態、学歴、経済状態、孫の性別・年齢・続柄、父母の就業状況等の要因にどの程度規定されているか。(5)三世代家族内の勢力関係や世代間の生活分離に、祖父母と孫の接触状況、祖父母の役割援助がどのように関わっているか。
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