本研究は、静岡県庵原郡にある3つの保育園に通う6歳以下の孫と3世代同居をしている祖父母126組に対して調査を実施し、「祖父母」側からみた「祖父母と孫の関係」を明らかにすることを目的とした。 本研究の結果、主に次の知見が得られた。(1)孫の世話の実態:祖父、祖母ともに第1位「孫と話す・遊ぶ」、第2位「孫とテレビを見る」、第3位「孫と家の中で遊ぶ」、第4位「孫に小遣い・菓子・玩具を与える」の順であった。また、祖母は祖父に比べて、孫の日常的世話(例えば「保育園の送迎」「食事を食べさせる」など)を多くしており、性差がみられた。(2)孫の世話に対する貢献度の自己評価:「貢献している」とする者が、祖母60.2%、祖父33.1%であり、祖母の貢献度の自己評価が高い。(3)祖父母と孫の親密度:孫が「なついていない」と回答した祖母は0%、祖父は3.3%にすぎず、孫との親密度はいずれも極めて高い。(4)「孫と一緒に暮らしていること」に対する満足感:祖父、祖母ともに「非常に満足している」者が圧倒的多数をしめている。(5)祖父母の生きがい:祖父、祖母の約36%が「孫の成長」と回答し、生きがいの第1位であった。「孫に関すること」を生きがいとして答えた者の合計は、祖母の50.5%、祖父の46.6%に達した。(6)孫のしつけへの関わり方と親密度との関係:祖父、祖母ともに統計的な有意差が認められ、しつけによく係わっている祖父母ほど、孫との親密度が高いことが明らかにされた。(7)孫のしつけへの関わり方と若夫婦とのずれの関係:祖母はしつけに係わっている者ほど、若夫婦とのずれを感じていないに対して、祖父はしつけに係わっている者ほど、若夫婦とのずれを強く感じている。(8)祖父母と孫との関係は、祖父、祖母による差異ばかりでなく、祖父母の職業の有無や職種によっても異なる傾向を示した。(9)祖父母の職業と「祖父母と孫関係」:祖父、祖母ともに「無職者」は、他の者に比べて孫の日常的世話やしつけに多く関わっている。また、日常的世話やしつけに最も多く関わっている「無職の祖母」は、孫との親密度が他に比べて圧倒的に高い。祖母の「会社員・公務員」は他の「祖母」とは異なり、むしろ祖父に近い傾向を示した。以上の結果から、祖父、祖母にとって孫との生活は非常に満足感の高いものであり、高齢期を豊かに過ごしていく上で、孫は大変大切な存在であること、高齢前期の祖父母と孫の関係には、祖父母の職業生活が影響を及ぼしていることなどが明らかになった。
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