研究概要 |
本研究の目的は,生活者が一生涯をおくる行程で,男女別に各年代で最もかかりやすい傷病にかかった場合の生活者の医療費負担の現状を示し,ライフコースを通した負担状況を明らかにする。また,付添い看護費用および室料差額について調査し,実態を明らかにする。これらの結果を総合し推計を加えることで,ライフコース上で生じる傷病に対する準備すべき生活設計上の方策を示すとともに,今後の高齢化社会で行うべき生活者の自助努力と,必要とする公的医療保険制度および医療体制を明らかにすることにある。本年度は最終年度であり,以下の実績を得た。 本研究に直接関連するわが国および欧米諸国の医療保険制度,医療供給体制の新たなる展開に関する情報の収集,各専門家からの教示を求めた。また,医療保険などの変化にともなって生活者自身が対応していかなければならない生活設計上の方策について,専門家の教示を受けた。付添い看護料および室料差額の実態調査を行った。平成6年度における研究で行った男女別のライフコースを通した医療費負担の推計と,実態調査から得られた看護費用および室料差額の結果を総合して,ライフコース上の医療関係費を算出,推計した。さらに,高齢社会における生活設計上の方策,生活者にとっての必要な公的医療制度および医療供給体制の検討を行った。その結果,医療費負担以上に付添い看護料と室料差額は、男女別,年代別に負担額に大きな差がある。特に,付添い看護費用と室料差額は,男子で10歳代前半と高齢期に極めて負担が重く,女子では20歳代から徐々に負担が増えて高齢期に一挙に重くなる実状にあることが明らかになった。わが国は新看護体制に移行し,付添い看護制度が廃止され,介護保険の導入が準備されているが,高齢期の疾病に備えた経済的準備は極めて重要で,医療保険制度や医療供給体制の改善が不可欠である。
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