研究概要 |
環境保全の立場から、従来使用されている洗剤用ビルダーとしてトリポリりん酸ナトリウム(STP)に代わる生分解性を持つメタアクリル酸塩とビニルピロリドン共重合体の性能について研究した。 性能評価として洗浄力評価、カルシウム交換速度、カルシウムイオン結合容量の測定、さらに洗浄後の布上に残存するカルシウムを高周波発光分析法(ICP)およびX線光電子分光分析装置(ESCA)により、その量および付着状態を研究した。 その結果、 1)このコポリマーは洗剤への配合量の増加に伴い洗浄力は向上し、40%前後の配合でほぼ平衡値に到達した。またカルシウムイオンの捕捉特性の測定からも、急速なカルシウムイオン捕捉速度を持ち、洗剤処方中でゼオライトよりもより適した性能を有することが分かった。 コポリマーの数平均分子量で8,000から18,000のものが最適なビルダー効果を与えた。 2)アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)ベースとする洗剤で、ポリマー添加と無添加を比較すると布上よりのカルシウム除去効果が6倍もよいことが分かった。また、カルシウム捕捉剤として洗剤中に配合されているゼオライトよりカルシウムの除去効果が高く、金属封鎖剤として高い効果を示すSTPとほぼ同じカルシウム除去力を示した。 3)ESCAによる分析の結果、被洗浄物(繊維)表面でのカルシウムの付着状態は、硫酸根(スルホン酸根も含む)と結合したカルシウムとして洗浄布上に吸着していると確認された。 4)日本、欧州の一般的洗浄系においてこのコポリマーは、水質汚染を防ぐ新しいビルダーとして活用が期待でき、特に省資源、省エネルギーの立場からドラム型洗濯機の使用が有効と考える。
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