研究概要 |
食用としている油は不飽和脂肪酸を含むものが多く、酸化され易い。特に、フライ油は高温で使われるために、熱酸化を受け、様々な酸化生成物を生ずる。油の酸化生成物の中には生体に障害をもたらす成分も生ずるが、これまでの油の酸化の定量法はマクロ的に遊離脂肪酸や過酸化物、カルボニル類などを定量するもので、毒性成分そのものを定量していない。我々は生体毒性を持つ酸化生成物が実生活の中でどの程度生成し、健康に関与しているかを明らかにする目的で、その定量法を確立するため研究を行っているが、本年度は酸化生成物の中で反応性が高く、毒性が問題視される短鎖(C10程度の)α,β-不飽和アルデヒドをカルボニル試薬でヒドラゾンとし、逆相HLPCを用いて定量する方法および最も毒性の強いHNE(4hydroxynonenal)のみを定量する免疫化学的定量法を検討した。前者ではC3〜C10までのα,β-不飽和アルデヒドの定量条件の検討を行った。まず、C3〜C10の10種のアルデヒド2,4-DNPと結合させ、各ヒドラゾンの結晶をとり、標品とした。各ヒドラゾンの定量にはHPLCを用いた。展開溶媒はアセトニトリル:水:THF、90:9:1から60:39:1を30minにわたるグラジエントで通液し、検出は(UV at350nm)で行った。その結果、10種の標品ともシャープなピークとして分別され定量できることを確認した。そして、これら10種の不飽和アルデヒド類量の合計を油脂劣化の指標とする計算式を作成した。この方法で180C,10hr、加熱の油中のHNE量は最大で(530nmol/ml oil)であった。次年度はこの定量法を用いて実際のフライ油やフライ食品中の矩鎖不飽和アルデヒドの生成量を明らかにしておく。一方、後者のHNEの免疫化学的法については名古屋大学農学部の内田浩二助手らの確立したモノクロナール抗体を用いるELISAによる方法で油中のHNEを定量できることを確認し、予備的に市販の様々な油や劣化を促進したリノール酸を用いてHNEの生成量を把握している。次年度は静岡大にマイクロプレートリーダーを購入し、食品中のHNEの定量を行い、前者の定量法との比較ならびに健康に及ぼす影響についても研究を進める予定である。
|