研究概要 |
平成6年4月に他大学から静岡大学への転入により装置グラジュエントHPLCの装置の設置が遅れ、又、共同研究者の学園に装置がなく、研究は若干遅れた。H7年度はC2〜C10のαβ-不飽和アルデヒド類(10種)の標品を入手し、2,4-DNPでヒドラゾンとし、グラジュエント逆相HPLCを用いて分別定量条件を検討した。アセトニトリル:水:THF、60:39:1/90:9:1を30min.で送液すると各標品のRTが分離し、分別定量が可能となった。8種の市販油を加熱(180℃)し、経時的に取り出し、2,4-DNPと反応させ測定した結果、標品のみに比べ、分離はするが、RTがシフトする傾向が見られた。油加熱時のアルデヒド類の合計生成量(TA)は1hr.加熱で、約0.1〜0.5mg/mlと油の種類で差を生じ、時間との相関やTBAとの相関は認められなかった。αβ-不飽和アルデヒド類のうち、生体にとって毒性の高い4ヒドロキシノネナ-ル(HNE)のELISAによる定量法を用いて加熱油(6種)のHNEの生成量を調べた。未加熱油では検出されず、180℃,5hrで、平均400nml/ml生成していたが、HPLC法では紅花油で224nml/mlであり、ELISA法の約1/2であった。HPLC法は測定までの操作が複雑なため低い値となったと推定される。市販フライ食品中のHNEは現在実験中であるが、フライ油やフライ食品劣化の一つの指標として、今回検討した短鎖アルデヒド類の分別定量は生体内で反応しやすいアルデヒド類を測定する方法としては有効であるが、HNEのELISA法はさらに特定のアルデヒドを正確に迅速に定量できる方法である。次に、実生活での市販フライ食品の問題点を明らかにするため、市販フライ食品による"胸やけ"(生理的不快感)についての調査を短大生(635名)を対象に行った。その結果、回答者の33.1%が胸やけの経験を持つことがわかり、その要因の科学的解明が必要であることが示唆された。種々の疾病が活性酸素種や2次的に生じるHNEなどと密接に関連していることから、フライ食品の劣化をHNEなどを指標とすることは意義あることと考えられる。
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