本研究は、快適な寝環境を、寝具、寝衣の面から提案することを目的としたものである。要介護老人をどこで、誰が介護するのかという課題は、非常に重要であるが、在宅介護の場合、種々な問題点が指摘されている。介護者の年齢や能力など、精神的・身体的負担が指摘されている。一方、在宅介護の場合、居住環境も考慮する必要がある。車椅子が使用できる空間が最低必要であるが、恵まれた環境は少ない現状である。公的機関での介護は、第3者の手で行われるため、種々な問題点が指摘されている。安心して介護が受けられるにはどうしたらよいのか、現在の介護の現状を見つめた。文献調査および実態調査を行つた結果、以下の点が明らかとなった。 (1)在宅であれ、施設であれ、介護を考える際、「家族」がKeywordとなる。経済発展は、社会福祉や社会保障制度を充実させる一方、個人主義を強め、老親への扶養責任意識を弱める傾向がある。このため、日本においては、親孝行意識が今後弱まることが考えられ、介護形態が変化する可能性があることが指摘された。 (2)特別養護老人ホームなどの施設での介護は、「人間的尊厳」がkeywordとなる。「ベッドに手足を縛る」という行為、「カギの附属した衣服」の存在、これらの事実をどのように考えればよいのか、答をみつけにくい。 (3)寝環境において、衣服・寝具の果たす役割は大きいと考える。現場での困難が予想されるが、自由服の着用が望ましい。寝具については、褥瘡予防寝具の使用も効果があると考えるが、科学的な根拠を追求する必要がある。 (4)居住環境については、ベッドとベッドの間隔、床の摩擦係数など、改善が必要である。 (5)高齢者の衣服情報期待度は、高くない状態が観察された。適切な衣服情報伝達の方法を検討する必要がある。
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