研究概要 |
手の発達を『作業のうまさ』と『両手の協働性』の2側面からとらえ,児童,生徒の手の発達の実態を明らかにするために観察法による調査を行った。教師の生活経験の違いにより「手の働き」に関する認識に差が見られたので,手伝いや遊びなどの日常生活に関しての質問紙調査も行った。また,前年の調査結果とあわせて教育の中での「手の働き」の位置づけを明らかにし,家庭科教育での実習・実技の役割について提言を試みた。 作業の「うまい」ものほど小学生,中学生,高校生ともに,正しく箸が動いていた。また,中学生,高校生では「うまい」ものほど運べた豆の数が増えていた。高い頻度の手伝いは,水や火を使わない初歩的な食器を扱う手ものであった。調理の下ごしらえや仕上げにかかわる手伝いは,年齢が低い程よくしており,全体的に小学生がよく手伝いをし,年齢の上昇に比例してなくなる傾向がみられた。 作業がうまく,非利き手がよく動いていたものほど,これらの生活経験が豊富になる傾向が見られた。また,箸の持ち方や茶碗の持ち方とも関連が見られた。 昨年の,教師の意識調査ともあわせて考えると,手を使ったり全身を使うような日常の活動は,子ども達の心身の発達に何らかの形で寄与していることがうかがえた。したがって,子ども達の発達を保障するためにも,家庭や学校教育のなかに目的意識的に手を使うことを取り入れる必要がある。なかでも家庭科教育の中での実習・実技は,暮らしていく技術の習得だけでなく,子どもの手の発達の視点からも重要な役割を担ってくる。
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