われわれのこれまでの研究から、冬季の圧雪路面での歩行・ランニングの運動強度は、非積雪期の同じ速度に対して心拍数で6〜10拍/分、酸素摂取量で2〜3ml/kg/分増加することが明らかとなり、その要因として積雪路面でも雪質が異なると強度が大きく変動することが示唆された。そこで平成7年度は、異なる雪質の路面(非積雪路面、圧雪路面、水べた雪路面の3条件、)での平坦な歩道での歩行・ランニングの速度と強度(心拍数)との関係について、運動学的指標(ピッチ、ストライド)を導入しながら比較する実験を行った。路面の雪質は、硬度を木下式硬度計で測定した。その結果、 1.速度と心拍数の関係は、積雪路面の歩行およびランニング中の心拍数は同じ速度の非積雪路面よりも上昇するが、速度が高くなる程心拍数の増加度は大きいこと。 2.積雪路面でも、水べた雪路面では圧雪路面よりもさらに心拍数が上昇する。 3.積雪路面での歩行およびランニングは、非積雪路面よりもストライドが低下する分を、ピッチの増加で補なおうとする傾向がある。 などの特徴が判明した。速度を上げると負担度の差が大きくなる原因として、(1)軟弱な路面では速度を上げるとキックの力が大きくなり、足の沈み込みが大きくなり力のロスが増すこと、(2)接地時間とキックの時間が長くなるため、ピッチの増加も限界があることなどの原因が考えられたので、今後はこの現象をもたらすメカニズムについて検討したい。
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