研究概要 |
歩行やランニングでは、速度から酸素摂取量(VO_2)を推定する換算式を使って運動強度やエネルギーを求めることができる。しかし、これらは雪のない路面での測定結果にもとずくもので、雪の路面では異なった換算式が必要と考えた。そこでわれわれは、非積雪路面(11月)と積雪路面(1,2,3月)での歩行およびランニング時の運動強度(心拍数、VO_2)と運動学的特性(歩数、歩幅)を比較することにより、積雪路面における歩行およびランニングの特徴を明らかにしようとする実験を行い以下の結果を得た。 (1)健康な高齢者10名を被検者とした歩行では、「圧雪」路面での積雪期の歩行は非積雪期よりも同じ速度に対してVO_2が3〜4ml/kg/分(約1Met)高かった。積雪路面の歩行は、歩幅の低下を歩数で補おうとする傾向が見られた。 (2)健康な男性11名を被検者としたランニングにおいても、「圧雪」路面では同じ速度の非積雪路面よりも心拍数が6〜8拍/分高く、VO_2は2〜3ml/kg/分増加した。各被検者とも血中乳酸菌は圧雪路面では非積雪路面よりも低い速度で急増する結果が見られた。 (3)積雪路面でも、「水べた雪」路面では「圧雪」路面よりさらに運動強度が増加し、歩幅が低下する。歩幅の差は低強度の段階よりも高強度の段階で一層顕著になる。 以上の結果から、積雪路面では非積雪路面よりも歩行やランニングの運動強度が高くなるが、積雪路面においても雪質によって運動強度や歩幅などの変動が大きいという結論に達した。
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