平成8年度は、"筋記憶"の存在を証明することに成功した。以下にその概要を述べる。 日常的に筋力トレーニング(Tr.)をしていない健常男子大学生(再Tr.群7名、コントロール(Cont.)群6名)を被検者とした。再Tr.群は原則的に週1日、7週間、動的可変抗式マシンによる1度目の筋力Tr.(10RMかそれ以下の負荷で10回かそれ以下の回数を1〜3セット、または4RMかそれ以下の負荷で4回かそれ以下の回数を1〜6セット)を行い、16週間の脱Tr.を経て、2度目のTr.を8週間行った。各Tr.期の前後計4度、当該マシンでの筋力測定(4RMでの最大発揮筋力)を行った。Cont.群は再Tr.群と同時期に筋力を測定し、3・4度目間の8週間は再Tr.群と同様にTr.した。Tr.と測定での動作様式は肘伸展・屈曲、肩水平屈曲、膝伸展・屈曲であった。 膝伸展筋力は、再Tr.群の最初のTr.で22.9%増加した一方、Cont.群は7.1%の増加のみであった。16週間の脱Tr.により再Tr.群の筋力はCont.群と同レベルに低下した。その後両群とも8週間のTr.を行った結果、Cont.群での6.5%の増加に対して、再Tr.群では16.4%増加した。これらの経時的変化に両群間で有意差(p<0.05)を認めた。膝屈曲筋力では2度目のTr.に入るまでは両群間に差がなかったが、2度目のTr.で再Tr.群には25.0%の増加が見られた一方、Cont.群の増加は6.1%だった。これらの経時的変化においても両群間に有意差(p<0.05)を認めた。肘伸展・屈曲筋力でも膝伸展筋力の場合と同様な傾向(有意差なし)を示した。また肩水平屈曲筋力の推移には、両群間で差がなかった。 以上、膝伸展筋力ではTr.による増加、脱Tr.による減少、再Tr.による応答の増大が認められ、"筋記憶"の存在が証明された。しかし、この現象が全ての筋にあてはまるとは限らないことも同時に示された。
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