スポーツ競技者の現役引退並びに運動部集団からの離脱後の適応過程について、主に、自我同一性の再確立に着目して以下のような研究が行われた。 (1)部離脱に関する相談事例の提示:研究者が心理相談室で担当した運動部離脱に関する6事例をまとめ、部離脱が危険的状況あるいは同一性再確立の困難な状況もたらしていることを示した。 (2)退部後の再適応に寄与する要因:退部後かなりの時が経過し、現在、比較的適応状態にある元大学スポーツ競技者10名への面接調査により、再適応を促進したと考えられる心理社会的要因を明らかにした。 (3)引退後の再適応過程の統合モデルの構築:わが国を代表する元アマチュア競技者8名への面接調査を行い、具体的な事例提示並びに、それらの資料から再適応過程を説明する一般化された「統合モデル」を提示した。 (4)各同一性再体制化のタイプごとの特徴:T大学時代に活躍し、さらに卒業後何年か引き続き現役競技者としての競技経験を有する元スポーツ競技者115名に対して調査を試みた。ここでは、それまでの事例研究で主張したことを中心に、操作的な方法により確かめた。 再適応への心理的援助の方法:本研究の一貫として行った文献研究の中から、すでに開発されているいくつかの心理的援助プログラムの紹介を行った。
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