武芸流派に関する文献・史料は全国各地に散在しているが、これらを一挙に調査することは不可能である。従って、今回はこれまで比較的実地調査の行われていなかった中国地方に地域を限定して作業を行った。事前調査の結果、近世武芸流派に関する史料が岡山大学等・岡山県津山郷土博物館に所蔵されていることが確認された。しかし、当史料は未だ未公開のものが殆どである。本研究は、これらの史料を中心に蒐集し、それを分析・整理することによって、近世武芸流派全般の文献学的研究の基盤となる基礎史料を作成し、それを解読・内容分析することによって文献学的に研究を試みたものである。今回は、岡山大学・岡山県津山郷土博物館等に所蔵されている史料を実地調査し、以下のものを蒐集した。 田宮流関係伝書・提宝山流太刀免状・戸田流太刀之書・疋田流槍術伝書・江戸日記・国元日記 以上の史料を写真撮影し、現像・CH焼き付けを行い、原典に忠実な形で保存可能な状態にした。現在、これをもとに、全史料について読解・内容分析を行い、史料集として一般に公開する準備が出来ている。 近世日本体育史研究(特に武道史研究)において、研究基盤となる基本的文献史料が不十分な中、未公開史料が公開される準備がなされたことは、意義のあることであると考えられる。
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