研究概要 |
本研究は過剰運動を未然に把握し、適切な運動の量・質をモニタリングするため、尿中のalkaline phosphatase(ALP),intestinal ALP(IAP)活性やTamm-Horsfall protcin(THP),immunogloblinのfree light chainの動態を運動との関係から検討し、運動による尿成分の変化から過剰運動防止マーカーを検索することを目的として行なった。 これまでの我々の健常な男子大学生の3km、10kmの走運動の実験結果からは総蛋白濃度のピーク及び総ALPの活性ピークは走運動終了後5-15min fractionかih fractionに認められた。運動後の尿中に出現するMacromolecular-ALP(Mm-ALP)は運動によって尿中に誘導された物質が通常のサイズのALPに結合して高分子化したものと考えていた。しかしながらALPはGlycosyl phosphatidylinositol(GPI)アンカー蛋白であることから、10km全力走後の総蛋白濃度のピーク分画のALPのphosphatidylinositol-specific phospholipase C(PIPLC)への反応性を予備実験的に検討した結果、PIPLC処理後に低分子化したALPが分離ゲル内に出現した。 本次研究の健常な男子大学生の400mの全力走運動後のPAGEによるALPのサイモグラムでは3km走後の場合に比較して全体のALP活性のうちMn-ALPの割合が多く観察された。このことは、運動強度が400m走のように強いときは、循環血液に由来する通常サイズのALPに糸球体や尿細管の細胞に由来する膜結合型のMm-ALPが強度の弱い運動の時よりも多く加わる結果と考えられた。 このような研究結果から尿中のMm-ALPは陸上競技等においては運動負荷強度の十分なマーカーとなり得る可能性があると考えられる。 今後はその他のスポーツ種目との比較や成長過程との関係からその意義をより深く検討する予定である。
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