研究概要 |
中・高年者の体力を簡便に,且つ安全に捉える主観的情報に基づく体力検査票を作成するため,理論的妥当性を考慮して各体力領域から112項目の検査項目を選択した.まず,項目分析を行い,統計的妥当性(基準関連妥当性等),信頼性を検討した.次に,横断的及び縦断的資料に基づき運動実施が体力に及ぼす影響等を検討し,自覚的体力検査の妥当性を検討した.また,自覚体力と生活条件との関係についても検討し,自覚体力に関与する生活条件について考察を行った.以上の検討から新たに以下のような知見が得られた.1.(1)各項目における成就率,信頼性,内的一貫性及び基準関連妥当性の検討を通して,30項目から成る自覚的体力検査を作成した.(2)自覚的体力検査について,体力要素別の評価尺度を作成した.2.(1)男性では,運動実施頻度が高い者程主観的情報に基づく体力変化を的確に捉える.(2)女性では,運動実施頻度の高低に係わらず,多くの変量において主観的情報に基づく体力変化を的確に捉える.(3)運動実施頻度は,男性より女性の自覚体力に影響を及ぼす.3.(1)自覚及び実測体力の総合得点はいずれも各体力要素との関係が類似している.(2)3年間の継続的な運動実施により,自覚及び実測体力の低下は認められない.4.自覚及び実測体力と生活条件は程度の差こそあれ有意な関連を示し,運動習慣のあることが両体力の維持及び向上に正の影響を及ぼす.以上のことから,本研究で作成した自覚的体力検査は,妥当性,信頼性が比較的高く,簡便且つ安全に実施可能なことから実用性の点においても優れており,中・高年者は実際に体力テストを行わなくても体力の評価が具体的に行うことができると考えられた.尚,本年度においては,体力テストが実施できる中・高齢者のみならず,障害を有する施設入居者から在宅高齢者まで対象を広げ,これらの身体活動あるいは動作能力を評価し得る検査方法についても検討を加えた.
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