本研究の目的は、本研究代表者が提起した「期待・感情モデル」に依拠して、体育における学習意欲を喚起する実践的な研究を試みることである。 そのために、今年度(平成6年度)では、(1)「期待・感情モデル」に依拠した体育における学習意欲喚起プログラム(喚起プログラムと呼ぶ)を作成し、(2)そのプログラムを実施するための方法論を確立することを中心課題とした。 対象は、小学校高学年を予定していたので、本研究者と実施対象校の体育教師との間で綿密な話し合いを重ねた。その内容は、主として「期待・感情モデル」の説明と討論、喚起プログラムの作成、予備調査実施のための具体的な方法論の決定に関してであった。 種々論議した結果、「期待・感情モデル」から予測される「子供たちの体育学習での期待および感情が高まれば体育における学習意欲は喚起される」という仮説が共通理解され、それに沿った具体的な喚起プログラムが作成された。そして、小学校6年生の跳び箱運動を対象として、体育教師による喚起プログラムを試験的に実施した。その結果、期待および感情の高まりと同時に体育における学習意欲が喚起される傾向が認められた。また、体育授業の楽しさも肯定的に変化していた。つまり、これらの結果は、本研究で作成した喚起プログラムの有効性を示唆するものであった。しかしながら、個人差が大きかったことなどから、喚起プログラムの具体的な実施に関しては改善すべき問題点が残されていると考えられる。今後は、体育教師や専門家との間でそれらについての討論を十分に重ね、さらなる喚起プログラムの実践を通して体育における学習意欲を高める有効な方法を提言していく予定である。
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