P^^<31>-MRS法による、運動時筋エネルギー代謝(酸化能力と解糖系能力)特性の評価方法を検討するため、以下の実験を行なった。健康な成人男性6名を被験者とした。運動様式としては肘屈曲運動を用い、5分間の最大下動的運動(25%MVC、反復回数30回/分)と、疲労困憊に至るまでの最大静的肘屈曲運動(50%MVC、肘角度90度)の2種類の運動を、常温下、筋クーリング下、およびW-up条件下の3条件下で負荷し、上腕二頭筋よりP^^<31>-NMRスペクトルを測定した。P^^<31>-NMRスペクトルからは、%PCr、Pi/PCr及び筋細胞pHを算出した。その結果、有酸素的運動テストである最大下動的肘屈曲運動においた、常温と筋クーリング下の間には筋の燐代謝に有意な差は見られなかったが、W-up条件下のPi/PCr比および筋細胞内pHは常温下より高い値を示した。一方、無酸素的運動テストではある最大静的肘屈曲運動では、筋クーリング条件下では常温下に比べてパフォーマンスの低下と高い筋細胞内pHが認められた。 W-upは筋温を高める効果があり、筋エネルギー代謝の酸化能力の効率を改善するとされている。一方、低筋温条件下の運動では、筋の解糖系エネルギー代謝が抑制されることが知られている。平成6年度の研究結果より、筋の酸化能力及び解糖系能力の定性的評価は、P^^<31>-NMRスペクトル解析からPi/PCr比、%PCr及び筋細胞内pHのより検討できることが示唆された。また、無酸素摂取量運動テストの筋クーリング条件において、筋解糖系エネルギー代謝が抑制され、筋細胞内pHが高値を示すことが認められたことは、パフォーマンスへの筋温の重要性を示唆するとともに、次年度の実験計画である筋トレーニングが骨格筋エネルギー代謝に及ぼす影響を解釈する上で、有効な知見となりうるものと思われる。
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