研究概要 |
本研究は,これまでに既に現象としては明らかとなっている手の位置決め動作における動作空間の認知特性を,神経解剖学的な交叉性支配と注意機構としての交叉性支配といった大脳半球優位性,および脊髄運動細胞興奮性(脊髄路性反射)から検討することを目的とし,特に,動作空間操作のために,神経心理学領域で頻繁に用いられてきている「90°頭部回旋法」を採用した.この方法に関して,(1)随伴性陰性変動(CNV)を指標とする注意機能における大脳半球優位性,および(2)H反射を指標とする運動細胞興奮性における頭部回旋の影響,の2点からの実験的検討を計画した. 平成6年度計画として,主として後者に関する実験を計画し,まず第1段階として,ゴニオメータ法により頭部回旋状況を運動学的にとらえることを試みた.P&G捻りゴニオメータを被験者の頸部から背部にかけて両面テープにて装着し,頭部回旋動作が比較的簡便に観察記録可能であることを確認した.しかし,ゴニオメータのアナログ出力をH反射誘発のトリガー信号として用いようとしたところ電位変換の必要性が生じ,様々な試みを行ってみたが,結局のところ電位変換装置を作成することになり,現在に至っている.このH反射実験は平成7年度計画として引き続き行う予定である. このような経過から,平成7年度計画であった大脳半球注意機能に関するCNV実験の予備実験を急遽行った.被験者には18名の大学生を用い,パーソナルコンピュータ画面上に警告刺激を出しその2秒後に動作手の第2指へ微弱な電気刺激を与え,それに対するキ-押し単純反応を行わせた.その際,被験者の顔は画面方向,体幹は右または左90°方向,動作手は体幹正中線上という姿勢を保持させ,単純反応課題における半側空間の操作を行った.課題遂行中,被験者の頭皮上F3,F4,C3,C4,P3,P4の6部位より時定数5秒で脳波を導出し,条件ごとに20回加算しCNV波形を求めた.CNVの左右差は個人差ばかりか個人内でも導出部位によって変動し,一義的に大脳半球の注意機能と半側空間との対応関係を同定することは不可能であった.恐らく,同一条件下の反応時間課題であっても,被験者によっては必ずしも空間的な注意制御を行っていなかった可能性があり,刺激特性や空間操作の再検討を行うこととした. 以上の経過より,平成7年度は,CNVの追実験および頭部回旋動作信号をトリガーとするH反射実験を引き続き行う予定である.
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