ICA系マウス(5週齢、雌、68匹)を用い、直径100μmの微細針を左橈骨手根伸筋(extensor capiradialis)に刺し局所筋繊維の微細損傷モデルを作成した。局所筋繊維損傷後20時間、2日、4日、8日、10日、15日、20日経過した筋繊維損傷の微細構造とそのDNA断片化を観察した。標本は厚さ8μmの連続切片にてヘマトキシンエオシン染色を施し顕微鏡像で観察した。また、DNA断片化の標本は厚さ4μmの連続切片からPi&Dapi染色法にて観察した。そして筋遺伝子の発現を検証するためにPolymerase I、Biotin-dUTP、Avidin-FITCによってNick Translationを蛍光顕微鏡で観察した。筋繊維損傷の微細構造は20時間後に筋膜の破壊と部分的細胞死(apoptosis)が組織像から認められた。その部分的細胞死像の近隣に活発な食細胞の浸潤が観察された。微細損傷部位の大きさは縦断面で微細針損傷点を中心に両遠位方向に筋繊維貧食像が観察され、その細胞死の範囲は165.9±72.5μmであった。そして筋繊維貧食像の両遠位末端に境界膜が形成され、それが部分的筋繊維細胞死の範囲を最小限にとどめる役割を担っていた。20時間以降の経過は、4日目で筋細胞の再構築筋核形態がmyotubeから観察された。再構築は境界膜の再生を引き金として始まった。また損傷20日後では再生進行過程で形成された新たな形成膜を引き金として、損傷部の筋繊維分化が近位部に向かって観察された。次に、損傷4日および8日後のmyotube形成期の筋核DNAはその近隣に局在していた。また筋遺伝子の発現はmyotube形成の近隣正常筋細胞からも観察された。以上の結果から筋繊維損傷時には積極的微細繊維破壊が進行する過程で再生の準備が遺伝子レベルで行われていることが局所筋繊維微細損傷モデル実験から示唆された。
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