近年、肥満が健康に対してリスクフアクターとなることが指摘されている。体内の貯蔵脂肪のうちでも、皮下脂肪より内蔵脂肪の蓄積の方が健康との関わりが深いとの知見が報告され、それを裏付ける研究もでている。しかし、内蔵脂肪の測定は容易はでなく、しばしばX線CTによる腹部の横断画像からの情報によるものが多い。CTによる方法はX線被爆という安全面で画像を多量に得ることが困難であり、限られた画像から全体を推測しているのが現状である。 我々は、最近発達してきた安全性が高く、軟部組織の解像度も高いとされる磁気共鳴画像(MRI)を多数得ることにより、平面的な情報から立体的な情報を引き出し、先ず皮下脂肪や内蔵脂肪の定量化を試みる。次ぎに、この高価で大量の計測には不向きであるMRI法に代わり、安価で多数を比較的短時間に容易に皮下脂肪や内蔵脂肪を計測する方法を見いだすことが目的である。 対象者は健康な女子9名、平均身長56.4cm、体重52.2kg、年齢21.7歳である。MRIはT_1強調画像で、10mm間隔で全身にわたり横断画像を撮影した。画像からプラニメーターにより、皮下脂肪、内蔵脂肪面積を計測し、これを容積に換算し、それぞれ平均6.37L、1.68Lを得た。 これら計測値の妥当性を検討するため、皮下脂肪厚において、MRI法と超音波法の画像から求めた値とは有意な差がないこと、また体脂肪率において、MRI法と水中体重秤量法およびインピーダンス法より得られた値と比較検討し、それらの間に有意な差は認められないことを確認した。MRIによる内蔵脂肪の解像度が皮下脂肪のそれに比較してやや劣るが、この計測値の妥当性の検討は今後の課題としたい。内蔵脂肪の簡易計測法を検索するため、からだの各種局部間のインピーダンス値とその間の脂肪組織量との相関を求め、臍下5cmの横断画像に注目している。
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