運動時の熱障害の解明を目的として、本年度は以下の2実験を行った。 1、暑熱負荷の違いによる体温調節反応と顔面血流動態の相互関係 ヒトの選択的脳冷却に関わる眼静脈血流の方向と流速の変動と体温調節とりわけ発汗量、鼓膜温、食道温、全身皮膚温、前額部皮膚温・血流量等の増加量との関係について検討した。受動的体加温時、運動時とも、前額部皮膚血流量や皮膚温の増加に伴い眼静脈血流の頭蓋方向への流速は増加する傾向がみられた。この時の直接の傾きは、受動的体加温時に比べ、運動時の方が急であった。この時の深部体温にたいする発汗量や皮膚血流量の増加率は、熱負荷の違いによる影響は受けなかった。これらの結果から受動的体加温による熱負荷時に比べ、運動時は顔面の皮膚血管の収縮・拡張反応が速いことが示唆された。 2、暑熱適応時での運動時体温調節反応に及ぼす環境温度の影響 ヒトの暑熱適応状態で、冷房環境下と高温環境下で12時間の生活、睡眠後、同一強度で運動運動させた場合の体温調節反応(食道温、全身皮膚温、皮膚血流量、発汗量、心拍数)の差異を検討した。結果:冷房環境下で過ごした場合の運動時の体温は、高温環境下で過ごした運動時体温に比べ高い温度を維持しながら変動することが判明した。これは、発汗量の違いによるものと推察され、暑熱適応時でも、一晩の冷刺激で耐熱放散機構に与える影響は大きいことが示唆された。 この研究は、暑熱障害防止が最終的な目的であるので、高温環境下での運動時の浸透圧、体温、飲水量の調査研究も合わせて平成7年度の研究を総合的に進める。
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