本年度は、幼児および児童の蹴球動作について、横断的な特徴を検討するために、高速度撮影および筋放電の測定を行っている。被験者は、広島市内のサッカークラブに所属する小学生男子児童2年生から6年生55名、津山市内の保育園年長・年中児23名について測定している。 筋放電の記録は、複数の関節の動きに関わる筋は選択せず、膝関節伸展に関わる外側広筋(m.vastas leteralis)、足関節の伸屈および固定に関与すると考えられる前脛骨筋(m.tibiarisanterior)、ヒラメ筋(m.soleus)について放電を記録した。動作分析に関しては、側方および後方より、秒速60コマで蹴り足が離地してからインパクト後までの蹴球動作について撮影を行った。 実験の処理については、現在(3月中旬)、高速度撮影による動作分析に関わる分析を行っている。ball speedに直接的に関与するswing speedは、経年的な増大を示している。効率的な動作に有効と考えられる上肢の誘導、体幹の前傾や支持足の動き等に関する入力・数量化を行っている。筋放電の処理は、数量化して積分したIEMGを算出している最中である。設備使用の関係で、動作分析、筋放電を数量化する作業は、現時点では入力・解析が終わっていないが、平成7年度当初に完了する予定である。 幼児の段階では、脚の動作範囲・swing speedなどの個人差が大きく、より動的な動きがball speedに影響する傾向が強いように思われる。幼児・児童期を通じて、swing speedやball speed、動作のパターンは加齢にともない著しい発達を示しているが、上肢の誘導や体幹の前傾は、小学校高学年児童において顕著なようである。今後、これらのfactorや筋の作用機序とball speedの相対的な関係について客観的に検討していきたい。また、幼児は、腰の水平方向への移動が少なく、支持足と蹴り足の動作の協応が未熟であり、本研究の課題とは異なるが、蹴球動作における支持・操作機能の左右差もこれからの重要な研究課題になると考えられる。
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