本研究は、蹴球動作におけるball speed獲得に関与する要素の発達を総合的かつ相対的に評価することを目的として行い、次のような結果を得た。 (1)蹴球動作のパフォーマンスとしてのball speedは、加齢に伴い経年的な増加を示し、各年齢でswing speedと高い相関を示した。 (2)他に顕著な発達的な変化を示した要素は、上肢の先導、上体の前傾、膝関節の動作範囲、ボールを捉える位置等であった。 (3)幼児期においては、腰をボールの後方に位置させるて蹴り出すという未熟な段階の動作の特徴が明らかになり、上肢の先導、swingspeedの大きさ等の動的な動きがパフォーマンスを評価する指標と考えられた。 (4)児童期においても、swing speedや上肢の動作とball speedの関連が高くなった。上肢と下肢の動作の大きさはパフォーマンスの指標となり得ると考えられた。 (5)小学校中学年の年齢で、キックのパターンはかなり獲得され、ボールを捉える位置との関連も高く、技術的要素の影響度が相対的に高くなると推察された。 (6)脚伸展に関与する外側広筋はball speedと正の相関を示した。足関節固定に関与する前脛骨筋は、小学校高学年において比較的関連が高くなり、powerの要素も加わるものと考えられた。 上記のように、動作の発達課程やその特徴についての知見を得ることができた。特に上肢や体幹の関連については直接的に影響を及ぼすものではないが、パフォーマンスに関与する重要な構成要素であるという結果を得られたことは、優れた動作を検討していく上で意味があるものと思われる。上肢の機能について結論することはできないが、上肢・下肢の支持・操作の左右差が認められる人間の行動においては、動作における左右差を検討することにより、その機能や特徴を明らかにでき、今後の重要な研究課題になると考えられる。
|