この研究では「現在および将来とも経済的・社会的に安定しており、安全で質の高い生活を享受することのできる農業集落」を持続的農村と考える。このような農村においてどのように個々の居住者と構成世帯が連帯して組織をつくって活動しているかといった、生活の全体の仕組みを農村システムと呼ぶことにする。 本年度は日本の農村の現状と将来性について取り扱った文献をまず整理し、さらに諸外国の関連テーマの研究と比較検討することから始めた。7月から8月までの間、研究代表者はカナダにおいて、研究分担者はフランスにおいて農村調査をする機会を得たが、持続的農村システムに関係する現地の研究者と直接情報を交換し、文献を入手することができた。文献研究と並行して、1990年の国勢調査報告と農業センサスの市町村別結果から、就業構造、農業生産性、人口動態、人口の年齢別構成(人口ピラミッド)などの指標の分布図を作成することによって、農村の全体的傾向を検討した。また、研究代表者と研究分担者が手分けをして、栃木県の那須扇状地の酪農農村と宇都宮周辺の近郊農業農村、群馬県の赤城山麓の養蚕農村、茨城県結城市における園芸農村、そして東村の稲作農村、さらに東京の調布市や八王子市の市民農園経営農村、富山県黒部川扇状地の稲作農村、山梨県の御勅使川扇状地と金川扇状地の果樹農村、静岡県の大井川扇状地と静岡平野など都市化・工業化が進む農村において予備調査を行った。そして、那須扇状地と赤城山麓、調布市、黒部川扇状地、金川扇状地、大井川扇状地を次年度からの事例調査地域とすることにした。
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