持続的農村システムの形成とその地域的条件に関する地理学的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06680136
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 田林 明 筑波大学, 地球科学系, 教授 (70092525)
• 研究分担者: 菊池 俊夫 東京都立大学, 理学部, 助教授 (50169827)
• キーワード: 持続的農村 / 持続的農業 / 環境保全 / 食料生産 / 稲作農村 / 果樹農村 / 入善町 / 御坂町

研究概要

この研究では持続的農村とはいかなるものであるか、また持続的農村の実現のためにはどのような条件が必要であるかを事例研究を通して明らかにした。平成8年度は最終年であるので、これまでの事例調査を集約する作業を行った。
研究代表者は、富山県入善町と茨城県東村の稲作農村における補充調査のほか、茨城県常陸太田市や千葉県館山市の園芸農村、軽種馬生産を核とした農業地域である北海道日高地方における調査、カナダでの調査結果などを通じて、持続的農村システムの性格と形成条件を考察した。また、現地調査の段階から研究分担者と共同で研究を進めてきた甲府盆地の果樹農村の調査結果を、日本地理学会や人文地理学会の場で発表した。さらに、平成7年度の夏に筑波大学で実施した、Tsukuba International Conference on the Sustainability of Rural Systems(持続的農村システムに関する筑波国際会議)の報告書を出版するにあたって、研究代表者も編集者の1人となった。研究分担者もこれまで調査してきた日本と外国の事例を対比しながら研究成果をまとめる作業を進めた。
結論としては、持続的農村を考える場合、基本的には(1)経済的安定(高い収益性の農業あるいは安定した農外就業)と(2)社会的・文化的安定(農村住民の安全で質の高い生活)を維持しながら、(3)十分な食料生産機能をもち、かつ(4)環境保全がはかられているかが重要な目安となる。このような持続性を実現する鍵となるのが、強い人間的結びつきに基づくコミュニティーがうまく機能をはたしているかどうかである。日本で持続的性格の農村の事例として取り上げたものの多くは、基盤整備が遅れたり、周辺地域よりも急傾斜にあったり、権威のある寺社が存在したりして、伝統的人間関係が残り、これがもとになって(当然ながら現代的に改善して)、持続的農村が実現されている。

研究成果

• [文献書誌] Akira Tabayashi: "Sustainability of Rice-Growing Communities in Central Japan" Proceedings of the Tsuluba International Conference on the Sastainability of Rural Systems. 224-240 (1996)
• [文献書誌] Akira Tadayashi: "Transformation of Japan's Rural Landscape and Economy:The Case of Rice Growing Village in Central Japan" The Geographical Bulletin. 39(印刷中). (1997)
• [文献書誌] 田林 明: "農村の持続的性格とその条件" 黒部川扇状地. 22(印刷中). (1997)
• [文献書誌] Toshio Kikuchi: "Sustainability of Dairy Regions in the Kanto District,Japan" Proceedings of the Tsukuba International Conference on the Sustainability of Rural Systems. 241-250 (1996)
• [文献書誌] 菊池俊夫・張貴民: "社会主義市場経済下における北京市の都市発展" 地理月報. 434. (1996)
• [文献書誌] 菊池俊夫・張貴民: "社会主義市場経済下における北京市の都市発展" 地理月報. 434. (1996)1-3
• [文献書誌] Sasaki,H.,Saito,I.,Tadayash: T.and Morimoto,T.: "Geographical Perspectives on Sustainabe Rural Systems" Kaisei Publication(開成出版), 514 (1996)