研究概要 |
本研究は、都市における生活の質と地域社会のあり方を検討するため、従来の顕在的に現れた生活活動空間の分析に加え、主観的次元を取り入れた分析を行ない,生活空間を総合的に明らかにすることを目的とする。多様な人口構成を持ち、生活空間の異質性を把握するのに適した東京都江東区の門前仲町周辺地区を対象地域に選び,アンケート調査を実施して活動空間・認知空間・帰属空間に関する分析を行なった。 分析により、次のような結果が得られた。 1)生活空間の広域促進要因として,若年齢、常勤職、区外就業といった属性が認められ、また狭域促進要因として,地元出身、自営業、中高年齢といった属性が認められた。 2)認知空間は活動空間よりも出身地の影響が強く出る。帰属空間は活動空間と対応関係にあるが、興味深い例外として、旧深川区という領域が特に地元と関係の薄い人々に身近に感じられている。これは深川が象徴的な帰属意識の対象としてとらえられているのではないかと考えられる。 3)出身地や職業・職場といった不変あるいは変えるのが難しい条件が、生活空間をある程度まで規定しており、同じ地域の中で異質な狭域あるいは広域の生活空間を生んでいる。しかし、加齢が狭域での生活空間を促進したり、パートタイム就業が中間スケールでの生活空間を形成するといった可変的側面も見られる。 4)狭域あるいは中間スケールで異質な生活空間の接点がつくられる可能性があるが、当面は、広域の生活空間に比重おく人々と狭域に比重ももつ人々という異なる生活空間を前提にして、地域社会のあり方を問うていく必要があろう。
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