モータリゼーションや職住の分離、あるいは週休2日制の普及、女性の社会進出などといった住民の生活活動の変化を適切に把握することは、先進国における今日の地域変容を理解する上で重要である。研究代表者らは、こうした問題に対して時間地理学の枠組みを援用した生活活動研究を提案し、実際に住民の生活活動の実態を詳細に調査分析する試みを続けてきた。今回の研究では、これまでの調査分析実務の経験を踏まえて、生活活動記録のデータを蓄積し、さまざまな分析作業を効率よく行えるようにするためのデータベース、および、生活活動の分析作業の中でも特に重要な位置を占める活動パスの分析を支援するために作成されたPAPDと呼ばれる活動パス図化システムの開発を試みた。 生活活動のデータベースは、AC社製のデータベース・プラットホームである4th Dimension上に構築され、1988年〜90年にかけて、長野県下諏訪町、愛知県日進町、埼玉県川越市で実施された生活活動調査から収集された生活活動記録をデータベース化したものである。このデータベースは、リレーショナルな構造を持っており、対象世帯の諸属性のデータと夫婦単位で収集された活動データとを一元的に扱うことができる。また、このデータベースはマルチメディアに対応しており、PAPDによって作図された活動パス図も収容している。 活動パス図化システPAPDは、Apple社のHyper Card上のHyper Talkのスクリプトとして作成され、時間地理学の基本的な概念の一つである活動パスを実際の活動データから作図する機能を持ち、活動パス分析に用いるほか、活動データのコーディングのチェックを支援する作業にも有効である。
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