研究概要 |
江戸時代にわが国で作成された世界図および外国図の種類がどのくらいあるのか,その数量的な掌握を意図するばかりでなく,どの潘の潘政史料中にどのような種類の地図が含まれているかという点にとくに関心をもって調査を進めている.現段階ではまだわが国で作成された近世世界図の種類の数量を正確には報告できないが,おそらく70〜80種類ぐらいに及ぶのではないかと推測される. 江戸時代を地図発達の観点から(1)第1期(慶長〜寛永),(2)第2期(正保〜天明),第3期(寛政〜弘化),第4期(嘉永〜慶応)の4期に分けた場合,ようやく世界図の刊行がはじまる第2期にできた世界図についてはその残存量がきわめて少ない.第3期の寛政以降になると地図の出版数も多くなり,それだけ残存量も多くなる.調査は不完全であるが,所蔵先別に一応の現存数量をみると松浦家文庫(平戸潘)の26点が多く,その他20点前後は加越能文庫(金沢潘),蓬左文庫(尾張潘)毛利家文庫(萩潘),池田家文庫(岡山潘),10点前後が(鍋島文庫(佐賀潘),永青文庫(熊本潘)などである. 江戸時代の世界地図の主要な所蔵者は幕府や諸国の大名らであったと考えられるが,その特徴的な傾向は西日本の有力諸潘の大名らが比較的多くの種類の世界地図を所持していたことを窺い知ることができた.これから引き続き各所蔵先での現存状況の調査を行う一方,地図の種類別の流布状況などを明らかにしたい.
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