副都心は本来、消費活動中心の街である。しかし、今日、副都心にもビジネス機能が集積を始め、管理的性格が付加され、都心的になりつつある。同時に副都心を取りまく環境も、郊外の自立化や既成大都市地域でのインナーシティ問題の発生など、これまでとは異なってきている。こうした中で副都心の構造変化と今後の方向性について、東京・渋谷を中心に研究した。 研究計画に基づき、平成6年度は渋谷でのオリジナルなデータを収集するため、来街者および経営者からの意識調査を面接アンケート方式で実施した。また、来街者の行動実態を知るべく追尾調査も実施した。さらに、官庁や諸団体・関係企業から既存資料の収集・聞き取り調査を行った。平成7年度は、官庁や諸団体・企業での既存資料の収集・聞き取り調査を継続的に行った。また、広く他の副都心も実地調査をする中で、研究全体のまとめを行った。 以上の結果、当初研究仮説とした大都市の構造変化にともなう副都心の衰退化は、その危険性をはらみつつも、街の問題を解決し、常なる新陳代謝をはかり続ければ、新たな活性化の可能性が高いことが分かってきた。すなわち、東京が構造的に分都市化し、副都心がそれぞれの分都市の中核になってきており、それが副都心の管理都心化にもつながるのではないかとの新たな知見がえられた。これは副都心の自立化であり、都市構造の転換を意味する。個々の副都心が個性化する中で、これまでの階層的で閉鎖的な垂直的ネットワーク構造から、解放的で水平的なネットワーク構造へ都市構造が変わりつつある。それが都市空間の立体化の中で生じている。従来の考えに基づく臨海副都心計画は、分都市化の中で大きな後背地を生かして自立化しつつある既存副都心のリストラクチャリングの方向性とは異なる。そこに問題があったと考えられる。
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