冬季オリンピック開催が決定している長野盆地地域を例にして、大規模人間活動による気候環境の変動に関する方法論を考案し、具体的研究例を示した。環境把握の方法、研究の方向性を示すことが重要であり、基礎的研究とした。また、大規模人間活動による環境の変化は開催地の直接的な改変ではなく長野盆地全体に展開され、より一般的な用語として都市化を定義した。都市化の進展に伴う気候環境の変化プロセスは地表被覆の人工物化とエネルギー消費量の増大が放射収支・熱収支を改変し、結果が気候環境の改変である。 直接的な気候環境変化の把握例としては、長野、須坂、中野、篠ノ井、松代、小布施、豊野につて基礎的な観測を実施した。ハンドヘルドコンピュータHC-40を使った気温の移動観測システムを確立した。結果の解釈として都市化の程度を表わす指標(人口、DID人口、市街地面積、天空比など)を考察した。ここでは最も一般的な人口数を用いた。具体的には各都市規模に対応したヒートアイランド強度を算出し、長野市が最大になるのは当然であるが、特徴的なことは人口1万2千の小布施のヒートアイランド強度が都市規模に比して大きいことが判明した。須坂市は長野市に比べて人口規模では3分の1程度となるが長野市のヒートアイランド強度3.4に対して2.7と大きいことも判明した。小布施とは異なるが、中心部での高層建築化を示している。気候環境の把握は、アメダス観測点の長野市と郊外地点として信州新町と菅平を選び、差の頻度分布を求め、都市化による気候環境変化を明らかにした。ランドサットによる環境把握は熱映像や緑被率などを算出し、有効性を証明した。
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