歴史時代の気候変動について、「中世温暖期(11〜13世紀)」と「小氷期(16〜19世紀)」の、2つの対照的な気候の期間を中心にして研究を行った。とくに欧州やアメリカなどで、これまで明らかにされている知見を比較検討して整理し、世界規模での気候変動の特色を、高い時間精度で明らかにすることを目的とした。また日本での史料不足から、気候変動が十分に復元されていない中世や近世についても、同時代の世界規模の復元結果と比較することによって、それらとの関係が解明できるよう試みた。本研究の遂行により達成されたこと、また明らかにされたことは、おおよそ以下のようにまとめられる。 1.以前から開始している古気候データベースの作成を継続し、多度津藩日記などの古日記から、新たに得られた天候資料を追加した。また「EUROCLIM(欧州古気候データベース)」についても、その利用が容易になるように、パソコンソフトの機能に修正追加を行なって、システムを整備した。さらにこれらのデータベースを用いて、広域における「中世温暖期」や近世の「小氷期」の気候変動の実態を、分析できるようにした。 2.上記のデータベースや、内外の関連諸研究の成果を用いて、古代から近世にいたる、日本および欧米を中心とした気候変動を、詳細を復元した。その結果、従来いわれていたような「中世温暖期」や近世の「小氷期」は、世界規模で起きていた現象であることが、明らかになった。
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