本年度は、現地調査によって試料の採取と露頭観察を行い、室内にて試料の粒度組成、X線回折、ESR分析などを行った。本年度に得られた結果はつぎのようである。 (1)現地調査は、北九州、山口県、島根県、広島県、鳥取県の海岸砂丘地、海岸段丘、石灰岩台地上の土壌調査を実施し、分析用試料を採取した。 (2)すでに採取している試料も含めて多数の試料について粒度分析を行い、<20μm画分についての堆積量を求め、最終氷期における時期別のダスト・フラックスを明らかにしつつある。これまでの結果は成瀬(1993)の結果に調和的である。 (3)ESR分析のための試料調整を行うとともに、試料中の石英含有量を求めるためにX線回析(ステップ スキャン法)を行っている。 (4)大阪大学池谷研究室でESR分析を行い、すでに分析結果の一部が得られた。その結果、中国黄土・韓国のレス中の石英、福井県の黒田泥炭層(最終氷期全般にわたる暑さ40mの泥炭層)中の石英の酸素空格子信号強度は、ともに6-10(任意単位)であり、ESR分析による広域風成塵同定が可能であることが判明した。これに対して、プレカンブリアの風化層中の石英信号強度は11〜12であり、また日本列島の流水堆積層中の石英は<5であり、広域風成塵起源の石英とは明瞭に識別できることが明らかとなった。この結果は今春の日本地理学会で発表する。 (5)このESR分析結果を踏まえ、さらに日本列島全域(宮古島〜北海道)の試料をはじめ、世界の主要なレス試料についても試料を調整を済ませ、大阪大学でESR分析を実施中である。
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