1 日本列島の風成塵フラックスをみると、最終氷期に多く完新世に減少する。また最終氷期中のstage 2のほうがstage 4よりも多く堆積し、それは最終氷期以降の気候変動、とくに乾湿の違いや卓越風の強弱、大陸氷床からもたらされるレスの量的変化などの古環境変動を示唆するものである。 2 酸素同位体ステージ2に堆積した中国、韓国、日本の黄土、古土壌、泥炭層などに含まれる微細石英(≦20μm)の同定と、その供給源を明らかにする目的でESRの酸素空格子信号量(任意単位)を測定した。 3 タクラマカンやツアイダムの石英は6.2〜8.2、この風下に堆積し、stage 2に対比される馬蘭黄土上部の微細石英は5.8〜8.3、韓国の低位段丘上の古土壌は6.0〜7.4であった。韓国の古土壌中の微細石英はいずれも中国黄土の数値域にあり、韓国の土壌が中緯度乾燥地域のタクラマカンやゴビなどの風成塵の影響を強く受けていることが明らかとなった。 4 与那国島は9.8、沖縄〜福井県が5.8〜8.5、青森県以北が10〜12.7であり、日本列島の風成塵石英はESR値によって与那国島以南、沖縄〜福井県、青森県以北の3地域に区分される。沖縄〜福井県の石英は韓国と同じく中緯度コースを通る風によって、青森県以北の石英は東アジア北部の先カンブリア紀の岩石地域から、与那国島以南の石英は中国南部、あるいは南アジアの先カンブリア紀岩石分布地域から飛来した可能性が高い。宮古島や鳥取・網野両砂丘地、秋田砂丘地の古土壌石英はstage 2に陸化した陸棚から飛来したものと考えられる。
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