研究概要 |
典型的な多雪山地である北アルプスに比べて,中国山地をはじめとする西日本の各多雪山地は標高が低い,このため,降雪量の変化などの環境変化に対して,泥炭地がどのように反応するかを明らかにすることが本研究の目的である. まず,米軍撮影の4万分1の空中写真判読を行い,西日本の主な泥炭地の地形判読を実施した.その結果,広島県北部県境付近の八幡原湿原(標高約800m)と島根県西部の沼原湿原(標高約500m)をまず主な調査地として決定した.前者は,幅広い沖積低地の谷頭部分に発達した泥炭地であり,泥炭質堆積物の層厚は1mをわずかに越える程度である.3つの地点から資料を採取し,その物理的分析(深さ5cmごとに,椀がけ法による混入無機物の抽出と重量比の算出,洗泥法による泥炭層の分解度の測定等)を実施した.その結果,深さ60cm付近を境として泥炭層の分解度が変化することが判明した.さらに,この付近の層準および泥炭質堆積物の基底部分の^<14>C年代測定を依頼した. 沼原湿原は,谷の途中に単成火山が噴出したため,その上流部分が堰止められた泥炭地である.現在カラー空中写真による微地形の判読を実施している. 丹後半島の大フケ湿原は地滑りの頂部凹地に起源をもつ泥炭地であり,前年度から調査を実施している。泥炭層の物理的分析を実施中である.この泥炭地では,約16000年前頃から泥炭層の堆積が開始し,12000年前頃から9000年前頃にかけて堆積速度が大きく,その後低下し,約4000前頃から再び速度が増加したことが判明した.
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