1.海藻の成分分析 実験材料の海藻として、瀬戸内海沿岸で一般的にみられるウミトラノオを選んだ。採取したウミトラノオは常法に従い、ヘキサン可溶部と酢酸エチル可溶部に分画し、それぞれの画分について成分検索を行い、ヘキサン可溶部からは脂質類を検出し、薄層およびガスクロマトグラフィーにより、脂肪酸のメチルエステル類(パルミトオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、C_<16:1>、C_<16:2>、C_<18:1>、C_<18:2>、C_<18:3>、C_<20:4>、C_<20:5>等の不飽和の脂肪酸)とステロール類、(フコステロール、24-メチレンコレステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β-シトステロール)を検出した。酢酸エチル可溶部からは、キエルマニアノン、サルガッサムラクトン、イソ-ロリオライド、フロロタンニン類を単離した。フロロタンニン類のうち、既知化合物であるフロログルシノール、フロログルシンメチルエステルは標品の各種スペクトルデータと比較して同定したが、新規化合物については、現在のところ、推定構造にとどまり、構造決定に至っていない。 2.化学実験教材の展開 本学三年次生の今年度(平成6年度)化学実験IIIにおいて、海藻分析をテーマに選び、ヘキサン可溶部の成分検索を課した。薄層クロマトグラフィーによって、脂肪酸のメチルエステル、ステロール類、トリグリセリドの分離は実験教材として最適であることが明かとなった。 3.今後の課題として海藻の色素と遷移金属の沈澱反応のおける反応条件の検討、有機金属化合物の生成および熱分解過程のメカニズムを明確にし、反応速度論教材としての可能性を追求する。
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