研究概要 |
1.環境問題の理科における取り扱いのうち,化学分野について,その歴史と現状を,主に教科書の分析という面から考察した。その結果,学習指導要領の第5次改訂より以前では,環境問題に関する化学的取り扱いは殆どなかったことを明らかにした。また、高等学校化学では,第5次改訂において学習者の多様化への反応を目的として成立した「総合理科」および「化学IA」で,初めて環境問題が化学教材として正面から取り上げられており,さらに環境教育教材の開発,精選が必要であることを示した。 2.小・中学校「理科」および高等学校化学分野で取り扱われるアルミニウムの関与する化学反応を取り上げ,実験教材として用いた場合のアルミニウムイオンを含む廃液処理およびリサイクルの可能性を検討した。この結果,アルミニウムイオンを含む実験廃液から種々のアルミニウム化合物を合成し,さらにアルミニウム金属へ変換する反応サイクルを確立した。これらの反応を化学実験教材として取り扱うことにより,アルミ缶の回収・再利用などの社会的な問題と関連して,環境問題への関心を高めることができると考えられた。 3.中学校「理科1分野」で取り扱われている,スチールウ-ルの酸化反応生成物を,キレート滴定を用いた鉄(II)および鉄(III)イオンの分別定量法を用いて分析する化学実験教材を開発した。さらに,種々の鉄の関与する化学反応の実験により生じる廃液の処理と再利用について現在検討中である。
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