本研究においては高専教育の現代化を目的として、工業高専の基礎専門科目である応用数学、応用物理、数値計算法、情報処理の総合化を実践的に研究した。その結果、(2)教育過程における総合科目の位置付け、(2)総合科目の教育目標・教育内容・教育方法、(3)学習教材などについて具体的な提案を行い、総合科目の詳細なシラバスを作成することができた。提案内容はこれまで5回にわたって研究講演会等で発表している(研究発表参照)。また、応用数学および数値計算法の理論を連携させて解説した指導書(学習書)と、応用物理および情報処理の課題を融合させた演習書(問題集)で構成した学習教材を作成した。学習教材を作成するにあたっては、MS-DOSベースのパーソナルコンピューターを計算機環境として想定し、プログラミングの演習教材はQuick BASICを用いて作成した。合わせてMS-DOS上のグラフ作成ツールの活用を取り入れた教育方法を考案した。作成した学習教材は浅井が担当する数値解析の授業で試験的に使用し、教育効果と問題点を調査・分析したが、興味・関心の喚起、主体的な学習活動の展開、学力の向上に関して教育効果が認められた。 教育の目的が知識の習得から自己学習力の育成へと転換し、高専の設置基準も弾力化された今、総合科目の開設は教育改革の中心的課題である。しかし、理科系の専門科目は体系的色彩が強く、文科系の科目に比べて総合化が困難であるため、教育内容、教育方法および学習教材に関する提案は極めて少ないのが現状である。本研究の成果は具体的な学習教材の形(単行本)で提供されるため、多くの高専でに総合科目を開設することが可能になる。また、学生が総合科目を履修することで、(1)工学と関連した数学および数値解析の知識と方法の統一的な理解、(2)物理および工学の問題(現象)を数学的に表現し、定量的に解析・評価する能力の育成、(3)計算機とツールの活用による現代的な情報処理技術の習得などが可能になる。本研究の成果は高専が社会的要請に答えた魅力ある技術系高等教育機関に成長し、学生が広い視野のもと、興味をもって基礎専門科目を主体的に学習し、技術者として必要な能力を習得できる教育環境の整備に貢献できるものと思われる。
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