研究概要 |
学習障害児の出現率は2.5%〜5%と報告されており,小学校の1クラスに一人いる計算になる.しかし,学習障害児の運動機能を定量的に評価する診断基準はこれまでに確立されておらず,したがって適切な訓練を受けることなく放置されてきた. 本研究は,運動機能に着目した学習障害児のための定量的診断法の確立を目的としている.児童の成長の過程において,視覚と手の協調動作などの知覚運動協応が運動発達の基礎となっている.われわれは知覚運動協応の中で指示動作に着目し,指示運動計測装置を試作してその計測を行った.視覚刺激および視聴覚刺激の2種類のターゲットに対する,成人健常者,健常児および学習障害児を被験者とした指示運動の計測を行った.その結果,視聴覚刺激を呈示した場合,成人健常者の指示点のズレおよび標準偏差が減少することがわかった。また,健常児と学習障害児において,視聴覚刺激を呈示したときにのみ有意差が生じた.これより,学習障害児は異種感覚の統合能力に劣ることが明らかとなった.この知見は学習障害児の定量的診断を実現する上で有用であろう.
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