平成7年度においては、以下の調査研究を行った。 大手パソコンネットワークであるNifty ServeとPC-VANにおける高齢者向けフォーラムのログを、他のフォーラムと比較して、発言内容の量的分布や質的拡がりについて比較検討を行った。(その一部については、教育システム情報学会研究報告95(2)において発表した。)その結果、(1)高齢者向けフォーラムは、参加者が40歳代、50歳代以上が大部分であり、20歳代から30歳代までが多い他のフォーラムと比較して、中高齢者の参加比率が目立って多い。また、若年の参加者の場合、仕事の関係で高齢者に接する必要があるなどの事情があることがわかった。(2)発言の内容としては、健康に関するフォーラムではないにもかかわらず、健康に関する話題がかなりの比率を占めていた。(3)発言のスタイルとしては、よく推敲されたと思われる完成された文章が多く、他のフォーラムに多く見られる、口語的、会話的なくだけた文章は少ない。(4)高齢者向けフォーラムだけをアクセスし、他のフォーラムに違和感を覚える発言者も見られ、このフォーラムの存在意義とともに高齢者がパソコン通信をする場合の問題点も示唆された。 質問紙による高齢者の情報接近に関する調査の結果、「高齢者は一般に情報機器等に関する親和性が低いが、その親和性は情報機器に詳しい近親者や知人の存在によって左右されること」、などが明らかになった。 本研究により高齢者の情報機器接近や情報教育に関する仮説的示唆が得られたが、これらの広範な検証は今後の課題である。
|