初年度でもあり、申請が認められてからの時間的経過も少ないので、公表実績としてはまだ充分ではないが、成果は充分にあった。 今年度はこどもの初期的科学概念形成過程について研究し、調査項目の検討をし、完成し、英訳とタイ語訳をし、調査を実施した。この種の科学概念に関する、対外国調査においては、その翻訳が大きな仕事であり、翻訳が出来あがること自体、大きな成果である。さらに、年度中に、タイ、ラオス両国を訪問し、研究協力者たちに研究の目的、調査方法の詳細を説明し、内諾を取りつけた。その結果、調査を実施し、結果を分析し得たことは大きな成果である。永く途上国援助に関わってきた経験から、研究活動の内諾と、それが実行されることの間に大きな隔たりがあることは承知している。従って、調査実行にこぎつけたことは大きな成果である。調査は、日本(名古屋市)およびタイの4地方で行われた。調査対象は総勢344名(内タイ284名)であり統計を取るには充分な数となった。タイの4地方も北部と南部に分かれ、その明きらかな違いが結果に表れた。当初、計画はしていなかったが、結果が出てみると、次示年度には、タイ中部にあり、かつ都会であるバンコックでの調査を加えることとした。結果として、当初、意図したように、児童の初期科学概念は大きく、環境(気候、地形、宗教、言語)に依存していることがわかった。 また、対ロシアでの調査についても、交渉を始め、研究協力者を得たが、国情からして、学校での調査実現には、まだかなりの克服すべき問題が残っている。又、先に述べたように、調査内容の当該国語翻訳が大きな仕事である事を考えれば、本報告者がロシア語ができないことはおおきな支障であり、有能な協力者を得ることが大事な仕事ととなる。 教育工学的統計処理法としては、従来のカイ検定等の方法ではなく、比較基準抽出法とでも名付けるべき、新しい方法を考え、関連した、科学概念調査に応用してみた。
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