本年度の研究目的であるプラネタリウム視聴前後の来館者の変容様態について、その概要を把握できたように思われる。具体的には、我が国のプラネタリウム関連施設に実際に赴き、視聴者の認知的かつ情意的な変容について調査し分析を加えた。その結果、以下のような主な知見を得た。 (1)「おもしろかった」というように情意レベルでの変容は期待されるが、認知レベルでの来館者の変容は生じにくい。また、その学習効果は、短期記憶にとどまる場合が殆どであり、長期記憶として保持されるものは極めて少ない。(その背景の1つに、上映プログラム自体の教育的分析の遅れを挙げることができる。 (2)来館者の多くが精神的なリフレッシュを求めて来館しており、自らの天文学的素養を高めようとする傾向は極めて低い(学習上映は除く) (3)学習上映に来館する小・中学生の認知的変容も僅かである。つまり、学習者のレディネスに合致したプラネタリウム・プログラムが十分に構築されていないこと。(上映者側の教育意図が十分に検討されていないために、来館者の変容を期待しにくいこと。) (4)本調査自体に批判的なプラネタリウム関連施設も少なくなかったこと。(インストラクターに天文学的素養を有する者は多いが、教育的な素養を具備している者は極僅かである。また、形式的に定期上映を行うのが精一杯の施設も少なくないこと。)
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