本研究では、まず、我が国のプラネタリウム施設(235施設)の稼動状況を、6つの観点(上映プログラムの入手方法、上映プログラムの選択基準、主な上映対象者、学校との連携、教育効果、及び運営上の問題点)から調査した。調査の結果、財政的問題(設備更新のための予算確保と予算拡大)や人的組織の問題(専門員の確保等)が、現在のプラネタリウム施設運営上の大きな障害となっていることが明らかになった。生涯教育の充実が叫ばれている昨今、プラネタリウムを含む社会教育施設への人的財政的援助の更なる充実が待ち望まれる所である。 また、本調査から得られた実態の中で特筆すべきことは、教育評価を行っているプラネタリウム館は約10%に過ぎないという点である。つまり、ほとんどのプラネタリウム館が、上映プログラムの教育効果について検討を加えておらず、‘見せて終わり'の上映に終始しているというのが実情である。一般市民がプラネタリウム館に何を要求しているのか、また、来館する子どもは天文事象についてどのような考えや疑問を抱いているのか、そして、上映後の子どもの考えはどのように変容したのか、等の検討が今後強く要求されてくるものと思われる。 そのため、次に本研究では、効果的なプログラム開発に不可欠な基礎研究に着手した。具体的には、プラネタリウムに来館する子どもが抱いている、天文に関する事象(空の近く形状・四方位・月の位相・三日月の裏面など)に関する素朴な考えや疑問について把握した。それは、子どもの考えや疑問を取り上げ、子どもの主体的学習の場を提供できるようなプログラム開発が急務な作業だと考えたからである。 このような我が国のプラネタリウム利用の実情を鑑みる時、当初の研究計画を修正せざるを得なかったことをお許し頂きたい。効果的なプログラム開発に着手するまでの道のりはまだまだ遠く、今後の自らの課題としたい。
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