研究概要 |
平成7年度は,「初任教師の授業力量形成」に関する次の2つの研究を行った。 1つは,5つの県の初任教師228名を対象に郵送法によって質問紙調査(自由詳述形式)を行った。そして,82名の教師から回答を得た。なお,82名のうち,臨時採用経験のある者が36名,経験のない者(新卒者)が46名であった。ここでは,臨採経験のない46名の初任教師の回答が分析の対象となった。主な結果は,次の通りであった。 (1)授業設計において,初任教師は,教科書会社の指導書に専ら依存しながらも少しずつ自分なりの考えを盛り込んだり,1時間レベルから単元レベルへ意識を拡大するといった成長がみらえた。なお,初任教師にとって特に難しいのは,授業前に子どもの反応(あるいは,つまづき)を予想することであった。 (2)授業実施において,初任教師は,子どもの考えや意見・疑問を大切にしながら授業を進めることを意識するといった成長がみられた。そして,予想外の子どもの反応や子どもの個人差への対応などに変化がみられた。 もう1つは,授業観察とインタビューという授業分析の方法を用いて,ある初任教師の1学期と2学期の授業の特徴を検討した。なお,この教師は約2年間の臨採経験があった。主な結果は,次の通りであった。 (1)この教師は,1学期のかなり早い段階から授業ルーチンを導入・定着させたりして「授業成立の基盤」を作っていた。その意味では,新卒の初任教師とは異なっていた。 (2)新卒の初任教師よりも優れた授業力量や学級経営力量をもっていると思われるこの教師にとっても,1年目の1学期は「試練の時期」であった。
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