研究概要 |
(1)姿勢調査:被験者が無意識に読み書きする姿勢において,眼球と文字間の視線距離を,読む時の距離に対して書く時の距離が近い場合(Aタイプ),ほぼ等しい場合(Bタイプ),遠い場合(Cタイプ)の3タイプに分類し,15〜20才の学生男女49名について調査した。結果はAタイプが57%,Bタイプが29%,Cタイプが14%であった。このことから書く動作は読み動作に比べ眼を対象物に近づけ集中が必要な動作が眼に対する負担も大きいと考えられので,これを眼に対する疲労負荷を与える方法として採用した。 (2)視力の基礎特性の測定:ランドルト環25個を被験者に提示して正答率100%の距離から正答率0%の距離まで,ランドルト環と被験者との距離を10cmずつ増やすように被験者を後方に移動させ,それぞれの位置での正答率を測定し,距離に対する正答率特性を求めた。被験者はランドルト環の特性上,乱視のない15〜20才の学生男女16名について測定を行った。この曲線の正答率50%の距離を(3)の実験での基準測定位置とした。 眼精疲労負荷時の視力特性:自作した距離測定装置とバイオフィードバックを用いた被験者自身による姿勢制御を用いて負荷距離を近姿勢あるいは遠姿勢に保ち,鉛筆で「英文の文字をなぞる」作業をそれぞれ5分間行った直後の正答率の変化を測定した。被験者は(2)と同様で行った。結果は遠姿勢に保って負荷を加えた場合の直後では正答率の向上,言い換えると視力の向上傾向が見られた。逆に近姿勢を保った場合は正答率の低下,言い換えると視力の低下傾向が見られた。5分間と短時間の負荷であったが姿勢の違いにより視力特性が影響されることが分かった。また,近姿勢での作業いわゆる近業は眼に対する疲労が大きいことも実験的に確かめられた。
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