研究概要 |
大学入試等,障害受験生に対する公正かつ適切な試験時間延長量の推定理論の開発を必要とする.我が国と米国の障害受験生に対する試験時間の延長量には大きな差異がある.また,我が国の共通1次試験の障害受験生の得点分布も時間延長の必要性を示唆している. このため,2年計画で試験時間を制限しない作業制限法における視覚障害受験生に対する試験時間延長量の推定理論の開発を行った. まず,従来記録が困難であった試験の解答過程を自動的に記録するため,ペン・コンピュータを使用したコンピュータライズド・テスト・システムを開発した.その操作感覚はマークシート解答のペ-パ-・ペンシル・テストとほぼ同様である.付属の電子ペン1本で自由にページを繰り,画面にメモを書き込みながら解答することができる.また,視覚障害受験生の点字問題の解答過程も,検査者が受験生に変わって操作し記録できる. 比較実験の結果,本コンピュータライズド・テストの記録からペ-パ-・ペンシル・テストの解答過程を推定することは可能である.大学1年生の両テスト群間で国・数・英の解答所要時間の分布はほぼ同様であった.しかし,国語の得点はコンピュータライズド・テスト群が若干下がる傾向が認められた.このため,両テスト方式で同一被験者群にテストを実施した所,解答所要時間及び得点等,両テスト方式の間に高い相関が認められた. 得点に関して等価な健常受験生群と視覚障害受験生群の解答所要時間の分布を比較し,作業制限法における試験時間延長量の推定を試みた.健常受験生99名及び点字使用の視覚障害受験生16名の実験結果の詳細は「研究成果報告書」に記載する. 一般に試験は試験時間を制限する時間制限法で実施されているため,今後本理論を拡張し,社会的により説得力のある時間制限法の試験時間延長量を推定する理論を開発する.
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