1、初等教育における台湾の「健康教育」科及び日本の「家庭」科の比較 A.共通点 (1)食物学習における「栄養素」及び「栄養素と食品の関係」の学習内容及び学習時期(5年生)に共通性がある。主な5つの栄養素も一致していた。(2)目標はいずれも(健康)生活に関わる知識・技術の習得を基盤とし、生活における実践的な態度の育成を目指している。 B.相違点 (1)「健康教育」科は4年生から開始され、週1時間であるが、「家庭」科は5年生から始まり、週2時間である。学習内容は、「健康教育」科は7分野で構成され、いずれも健康な心身の在り方に関する内容、「家庭」科は3領域で構成され、健康な家庭生活の在り方を学習させる教科である。(2)「健康教育」科の食物学習に、「調理実習」、「献立作成」等の学習は含まれていない。「健康教育」科の食物学習の順序は食品→栄養素であるが、「家庭」科は栄養素→食品の順である。牛乳の分類は「健康教育」科では「蛋白質」、「家庭」科は「無機質」を多く含む食品である。また、「無機質」を多く含む食品は「健康教育」科では野菜類、「家庭」科は牛乳・小魚・海藻類である。(3)教科書の記述内容に関して、「健康教育」科は教師の発問事項や説明的な文章が多いが、「家庭」科は実験データ等を表したグラフが多い。 2、台湾と日本の6年生児童を対象とした学力調査及び家庭生活態度の結果 (1)問題解決的思考力は、日本の児童が提示された問題を客観的に捉え、学習事項をふまえて改善策を科学的に思考する者が多かった。台湾の児童は問題を客観的に捉えるよりは、嗜好や観念で記述している者が多かった。(2)しかし、健康志向度、家庭生活態度とも日本の児童の低位な実態が把握され、学習結果が態度に結びついていない状況が見出された。これらより、今後の日本の家庭科における重要な課題が示唆された。
|