体育の学習指導の中でも、「器械運動」は他の教材と異なる点が多く、それらを克服するために次のような指導方法が用いられるのが一般的である。 (1)学習者の基本動作に対する経験が極めて少なく、学習すべき動作の感覚がつかめない場合がある。そのため、学習すべき運動を指導者が示範したり、熟練者が行ったビデオの視聴によって学習すべき動作を把握させる。 (2)学習すべき運動が危険を予測させるものであったり、学習者によっては高難度すぎるために、実動作の学習には直接取り組めない場合がある。そのような場合には、学習者のレベルに合わせた難度のものを段階的に指導するとともに、補助等によって安全かつ安心して取り組める環境を保証する。 本研究では、これまでのスポーツバイオメカニクス的な研究家ら得られた理論を背景として、「鉄棒運動」を中心にコンピュータを応用した理論学習から実動作体験に至る学習指導プログラムの開発をすすめた。 1.運動の力学的な側面についての学習プログラムにおいては、特に理科の学習内容との関係づけに配慮した。 2.コンピュータ・シミュレーションによって学習すべき運動イメージを自分の身体運動のイメージに結び付けるプログラム方法や、学習すべき運動を疑似体験させるために、運動理論に基づいた特製の鉄棒運動ロボットを試作した。 3.学習者の学習すべき運動に対する認知レベルや技能獲得のための取組みを含めた学習意欲の向上を目指した指導手順として、(1)運動の理論的な学習→(2)身体運動のイメージの疑似体験→(3)実動作のドリル学習に関する具体的なステップを検討した。
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