本年度は平成6年度において残された研究課題のうち、昭和20年8月から昭和21年5月までの史料の収集とその結果の分析を行った。その結果、数学教育に固有な議論が開始される以前に、教育全体の議論として、教育課税、学習指導要領、そして、教科書の編纂の順序性が明らかになった。 まず、昭和21年11月にはCurriculumの用語がわが国に搬入され、その後教科書の墨ぬりの問題と交錯し、教科書を含むCourse of studyの用語が翌21年2月頃からわが国の文部省との議論の中で登場した。そして、この「学習指導要領」の訳原語となったCourse of studyが、アメリカのいくつかのプランとともにわが国に取り入れられたことがわかった。 以上の考察の結果は、これまでに明らかにした数学教育に関係する考察の前史としての意味をもち、筆者にとっては懸案であった終戦直後の貴重な史料の収集とその分析が終了したことに大きな意義を見いだすことができる。
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