研究概要 |
分離型と相乱型ゲームによる学習成果の学年差を検討し,それぞれの様式のボールゲーム学習の適時期を明らかにした。さらに,先行学習のゲーム様式の違い(的あてゲーム,ラグハンドボール,ミニサッカー)がミニサッカーの学習成果にどのように影響するのかを検討した。なお,それぞれは,移行タイプ,発展タイプ,継続タイプと名付けた。 いずれの学年においても分離型ゲームでは,仲間との連係を生かした作戦を遂行できるようになることが認められた。しかし,4年生の分離型においては,仲間と関わってシュートチャンスを生み出す工夫に飽和状態の生じていることが推察された。一方,相乱型においては,仲間との連係を生かした攻撃は,2年生では難しく,4年生以降において可能であると考えられた。 さらに,分離型では,2年生で『よろこび』『評価』の両尺度において向上した項目が取り出されたが,3・4年生で『よろこび』尺度で特徴的に向上した項目はみられず,4年生で『評価』『価値』で低下する項目がみられた。一方,相乱型では,2年生で『よろこび』『評価』の両尺度で低下する項目がみられ,3年生で『よろこび』で向上した項目が取り出され,4年生では『よろこび』『評価』『価値』の全てにおいて特徴的に向上した項目が取り出された。 すなわち,コンビネーションからのシュートを学習内容の根幹に据えた分離型ゲームの学習の適時期は2年生に,相乱型ゲームの学習の適時期は4年生以降にあると考えられた。 また,継続タイプの学習成果は,移行タイプと大差が認められず,発展タイプにおいて最も高かったことから,3年生には,相乱型ゲームの学習よりも過渡的相乱型ゲームの学習が適していると考えられた。 これらのことから,低・中学年期の「ゲーム」領域のゲーム教材の配列として,「攻防分離型→過渡的相乱型→攻防相乱型」へと学年進行に伴って,移行・発展させる方法は,それぞれの学年の児童の適時性に即した教材配列に成り得ると考えられた。
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